活用体験記
活用体験記
うつ病
【状況】
40代男性、会社員のTさんは、会社での仕事のスピードについて行けなくなり、さらにそのことで上司に罵倒されるようになりました。
そんな状況が続く中、次第に身体に不調を訴えるようになりました。
食欲が無くなり、意識が散漫で、メールや文書を読もうとしても、文字が頭に入ってこない。
さらに、朝起きるのが非常につらくなり、これは「うつ」かもしれないと言われ、心療内科にかかりました。
心療内科での診断は、「うつ」。
抗うつ剤を処方され、休養を勧められました。
ただ、Yさんとして、ただでさえスピードを要求される職場で数ヶ月抜けるというのは、復帰は絶望的だと感じたようです。
そのため休職すると、将来の不安や、お金の事や、自信喪失でよけいに悩みそうだと感じて、休職以外の方法を模索したようです。
【カウンセラーの着眼点】
職場の仕事の種類が変わり、スピードが要求され、その上で人間関係のストレスも加わって起こる、最近増えているタイプのうつ病だと感じました。
このタイプのうつ病の場合、休職して心身を回復できても、職場には問題が残ったままになります。
現実的な問題点は以下
◆スピードの早い仕事についていけるのか。
◆罵倒する上司と上手くやっていけるのか。
そして、Tさんの心身の問題として
◆頭が働かない。動悸がするなどの心身のダメージを回復させる。
◆マイナス思考を改善しないと再発の恐れあり。
うつというのは、単に心の問題や症状だけではなく、現実的な問題も一緒になってやってきます。
そこで、認知行動療法は、認知=心の問題だけでなく、行動も変えることで現実の対処法も学んでいくので、非常に適応しやすいケースだと言えます。
Tさんと話し合った結果、どうしようもなくなった場合は休職するとして、それまでは認知行動療法を続けながら仕事を続けることにしました。
【進め方】
まず、頭にモヤがかかったようで気力がない状態では、認知行動療法で変化を起こすのも難しいので、まずは脳機能と自律神経の回復に務めました。
具体的には、脳に酸素と栄養を送り込んで、リハビリ的な特殊な運動で脳を刺激するホームワークをお伝えしました。
その場で少しやってみただけで、刺激を受けたようで、「初めて治るかもしれないと思えました。」とおっしゃったのが印象的でした。
単なる休息では衰えるだけなので、アクティブ・レスト(活動することで回復効果を高める)が大切ということです。
ホームワークをしていただくと、すぐに寝起きが良くなり頭が働くようになってきました。
ということで、初回面談の2週間後から認知行動療法を進めることになりました。
Tさんの場合は、どういう状況で、どういう自動思考が出てきて、どんな行動になるのか、そのパターンの特定(アセスメント)を繰り返して、自分に気付くトレーニングから始まりました。
そして、まずは行動面で変えられるポイントを、2人で出し合い、次回の面談までに試して頂き、結果を報告してもらうのをホームワークとしました。
それはTo doリストの使い方や、メモの取り方、上司への報告するときの言葉など、非常に具体的なものです。
ほんの小さな一点を変えるだけで、全体のパターンが変わるということも多いのです。
アクティブ・レストによって頭が元気になっていることで、モチベーションは非常に高く保たれていました。
仕事面で、改善が見られてくると、そこで認知再構成法を使って、思考パターンを変える練習を行いました。
マイナス思考を変えていく部分です。
更に、EFTや、書き出し法、催眠によるリラクゼーション誘導などを行い、その日のストレスをできるだけ解消して終えるように、セルフヘルプの方法も学んで頂きました。
上司や仕事に対する現実的な対処法や学習を行ったこと、そしてマイナス思考を修正していったことで、職場のストレス(原因)が小さくなり、Tさんの表情も精気を取り戻してきました。
10回目には、認知行動療法の進め方もかなり収得されて、ご自分でも問題解決ができるようになりました。
自己啓発の意味も込めて、たくさんのセルフヘルプの方法を学んで頂き、全18回の面談にて終結いたしました。
その後に、3ヶ月後にフォロー面談を約束し、6ヶ月後にも問題なければ、薬を止めることを医師の許可のもと計画しています。
パニック障害
【状況】
20代の女性Sさんは、通勤中の電車の中で2度のパニック発作を経験し、
それ以後、電車や車に乗ると、肩と足に力が入り、息苦しくなる症状に悩まされるようになりました。
病院での診断の結果はパニック障害で、抗不安剤を処方されました。
薬の効果を感じられず、医師にそれ以外の改善法は無いかと聞いたところ、認知行動療法が紹介されました。
【カウンセラーの着眼点】
私もSさんの症状は典型的なパニック障害だと判断し、認知行動療法で成果の出しやすいケースだと感じました。
最初にパニック障害の仕組みや、予期不安に関してお話しさせて頂き、Sさんの症状が起こるパターンを特定(アセスメントと言います。)していきました。
Sさんの場合は、乗り物で症状が出るというだけでなく、
◆逃げ場が無い(すぐに降りられない。)
◆他人や失敗できない人と同席している。
というような条件が重なった時に、予期不安が高まり、発症するのだというパターンが特定できました。
その上で、このパターンを如何に変えていくか、2人で話し合った結果、
①エクスポージャー(段階的暴露)
②認知再構成法
③催眠療法
④EFTによる恐怖感の解放
の4つを行っていくことで同意しました。
Sさんが症状改善へのモチベーションが高かったこともあり、段階的暴露に積極的に取り組まれたようです。
6回目のセッションでは、既に電車通勤にもどすことに成功しています。
その後、フォローも含めて計10回のセッションを終えて、終結しました。
対人恐怖・社会不安障害
【状況】
30代男性のMさん。高校を卒業して以来、人間関係のストレスから仕事が続かず、引きこもり勝ちに。
人と接するのが苦手で、電車に乗るのも、買い物で店員と接するのにも抵抗を感じている。
人と接すると手足が震えたり、声が出にくくなったり、頭の中が突っ張ったりするのがストレスで、仕事がなかなか続かない。
そのため、短期のバイトで生活をしている。
友達出来ないので、人間関係を上手く築けるようになりたいと、カウンセリングに訪れました。
【カウンセラーの着眼点】
お話を伺って、対人恐怖症の典型的な症状だと感じました。
対人恐怖症も認知行動療法の適応しやすい症状だと言えます。
もともと人見知りしがちな上に、少年時代にいじめにあった体験があり、「他人は自分を攻撃するかもしれない。」という信念を持っているケースです。
【進め方】
認知行動療法の説明の後、どういった状況で人に対する怖れが出るのか、特定(アセスメント)を行いました。
そうすると、1対1では大丈夫で、多人数になると声が出にくくなるなどの身体の症状がでることが分かりました。
認知再構成法を行うと、「他人は自分を攻撃するかもしれない。」という信念が出てきたので、
NLPの6ステップリフレーミングや、フォーカシング、催眠療法、インナーチャイルドヒーリング、EFTなどを使って、無意識を癒し、教育し直すことを続けつつ、
もう一方で、認知行動療法を使って、認知=思考パターンと、行動の変化を起こしていきました。
人と向き合った時の、自分の中の思考を観察したり、
段階的暴露を使い、徐々に人に接してストレスそのものを感じていったり、
そうやって、馴らしていくことで、人に対して回避しようとする潜在意識のプログラムを書き換えていきました。
最初はコンビニの店員とのやりとりなどで、段階的暴露を行いましたが、無職のため他の状況が用意できなくなり、それが問題になりました。
話し合った結果、Mさん自身が認知行動療法に前向きになっていたこともあり、バイトを始めることで合意しました。
バイトの中で訪れる、苦手な状況を見つけ出しては、それに対して修正を行うということを繰り返し、
やがては自分で自分の思考パターンに気付き、積極的に人に関わっていくようになりました。
1年近く継続し、20回以上のカウンセリングを続けました。
今までに話さなかったタイプの人と話せるようになったり、足が震えたりすることが無くなって来たところで、終結しました。